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桑田真澄 球児たちへ

野球を好きになる七つの道 ~その1~
2010年07月24日

 現役を引退したぼくは、昨年春、早稲田大大学院スポーツ科学研究科に入学しました。
大学院では「これからの時代にふさわしい野球道」について1年間考え抜き、論文を書きました。
たくさんの人たちの協力をいただいて完成した「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」は、
幸いにも社会人1年コースの最優秀論文賞を受賞しました。
この論文を下敷きに、無限の可能性を秘めたみなさんが楽しくプレーするためのポイントを七つにまとめ、提案しようと思います。
(聞き手・鈴木繁)

一、練習時間を減らそう

 みなさんは、毎日どれくらい練習していますか。

 ぼくは論文を書くために、プロ野球選手270人にアンケートをしました。

 高校時代の練習時間の平均は平日で4時間半、休日で7時間20分。15時間以上練習していた人もいました。

 みなさんは、このデータを見て、どう考えたでしょうか。

 「プロになるためには、やっぱり長時間の練習が必要なんだなあ」と思いましたか?

 ぼくは、PL学園高校1年夏の甲子園で優勝した後、監督に「全体練習は3時間にしましょう」と提案しました。

 決して怠けたかったからではありません。どんなに野球が好きでも、自分の体力と集中力には限界があると考えたからです。

 その後、PL学園は黄金期を迎えます。ぼくたちは春夏合わせて優勝2回、準優勝2回。

 2年下の立浪和義選手(元中日)の世代も3時間ほどの全体練習で春夏連覇を果たしています。

 短時間で効果的な全体練習をして、その後は各自の課題や体調に応じて個人練習をした方が技術力はアップすると思います。

二、ダッシュは全力10本

 技術を向上させるためには、どんなスポーツでも反復練習が必要でしょう。

 でも、最高速度でダッシュを100本、素振りを千回もできますか。きっと、だれにもできません。

 では、指導者から無理やり命じられたら?

 正直にお話しすると、ぼくはカウントする数字を抜きました。3の次は5、5の次は7、10……。

 「ランニングに行ってきます」と言って指導者から離れて、その頃はまだ普及していなかったアイシングをしたこともあります。

 後輩たちと寝転がって、大きな空を見上げていたこともあります。

 もちろん、手を抜いたりサボったりするのはいいことではありません。

 でも、決して大きくない自分の身体を守るためには必要なことでした。

 なぜなら、ぼくの周りのまじめで才能のある選手ほど、指導者から指示されるままに頑張りすぎて、ケガをして、表舞台から消えていったから。

 それに、練習量を増やし過ぎると、動作は徐々にゆっくりになってしまいます。

 その動きを脳が覚え、身体に染みついてしまう。ダッシュは全力10本でいい。

 きみが投手なら、ダッシュ1本が1回の投球だと思って9回走ってみよう。10本目は延長の分。

 どうですか、集中力がぐんと上がったでしょう。


三、どんどんミスしよう

 野球はミスをするスポーツです。イチロー選手だって打席に立った半分以上はアウトになる。

 どうしても起きてしまう自分のミスをチームメートに救ってもらったり、逆にチームメートのミスを自分がカバーしたりする。

 こうした助け合いの気持ちがチームプレーだし、野球というスポーツの魅力です。

 ミスをなくそうとムダな努力をするよりも、ミスから学ぶことのできる選手の方が、成長が早い。

 それなのに、ミスをした選手を怒鳴りつけたり、罰練習をさせたりするのは野球というスポーツがわかっていない証拠です。

 ミスをすると、どうして失敗したのか考えるチャンスになります。次にミスを減らすための練習に熱が入ります。

 ここでは絶対に三振したくないと思うと、体はこわばり、ボールを迎えに行ってフォームが崩れてしまいます。

 そういう時は「タイミングだけ合わせて、空振りしてやろう」と考えましょう。

 投手が振りかぶってきました、さあ、ゆっくり体重移動、思い切って空振り! あれ、ヒットになってしまいました。


四、勝利ばかり追わない


 野球をしていると、ぼくはいつもわくわくします。

 けれど、小学生時代は毎日、グラウンドに行くのが憂鬱(ゆううつ)でした。指導者に殴られるからです。

 顔がぱんぱんに腫れ上がり、殴るところがなくなると、今度はケツバットが猛スピードで飛んできました。 

 体罰は指導者だけでなく、先輩から受けることもあります。

 特に、目の前の試合に勝つことを至上の目的にすると、指導者は手段を選ばなくなります。

 とりわけ小学校時代は、礼儀と体づくりの基礎を身につけることが大事です。

 そんなときに、選手権大会は必要ないと、ぼくは考えます。

 プロ野球選手へのアンケートでは、指導者から体罰を受けた経験がある人が

 中学時代で46%、高校47%、先輩からの体罰が中学36%、高校51%にのぼりました。

 こんなに多いのは指導者が体罰を受けながら練習してきたからです。体罰は連鎖します。
  
 体罰を受けた選手は、体罰を与える指導者になる。

 理不尽な体罰を繰り返す指導者や先輩がいるチームだったら、他のチームに移ることも考えて下さい。

 我慢することよりも、自分の身体と精神を守ることの方が大切です。


五、勉強や遊びを大切に


 明治時代のはじめごろ、野球は放課後を楽しく過ごすための遊びでした。

 そこから、長時間練習が当たり前になったのは、戦前に早稲田大学の監督をしていた飛田穂洲(とびた・すいしゅう)さんが

 提唱した「野球道」の影響が大きいと言われています。

 「千本ノック」に象徴される猛練習、武士道にも通じる精神主義、指導者や先輩への絶対服従……。

 残念ながら、いま「野球道」は選手を罵倒(ばとう)することを恥じず、体罰をためらわない指導者の精神的な支柱にさえなっています。

 しかし、飛田先生が「野球道」を提唱したのには別の理由がありました。当時は軍国主義に向かう時代です。

 軍部や政府から「敵性競技」として、にらまれがちだった野球をなんとか守りたいという思いも強かった。

 その証拠に、監督としての飛田さんは決して一方的な指導をしていたわけではありません。

 合理的な最新の戦術を取り入れ、選手には自己管理を求め、勉強してきちんと学校を卒業することを奨励するなど、バランスのとれた指導者だったのです。

 みなさんのような成長期の人には心身のバランスが大切です。練習時間を短縮して空いた時間は、勉強や遊びにあててください。

 「苦手な勉強で苦労するより、得意な野球の練習に集中した方がいい」と思う人がいるかもしれません。

 でも、人間は得意なことだけで生き抜くことはできません。

 プロ野球の世界で長年活躍できるのは、対戦相手を分析したり、自分自身をコントロールしたりできる、賢い選手です。

 現役生活を引退してから生きるのは、遊びや新しい出会いを通じて身につけた「感謝する心」「ひとを思いやる気持ち」です。

 こうした能力を養うためにも、生活のすべてを大切にしてもらいたいと思います。


六、米国を手本にしない


 みなさんの中には、野球発祥の地、米国のベースボールこそが理想だと思っている人も少なくないでしょう。

 しかし、現在のメジャーリーグはドミニカ共和国やベネズエラ、プエルトリコなど米国以外の国から来た選手たちに支えられているのです。

 いま、残念なことにリーグ全体に拝金主義がはびこり、稼ぐためなら手段を選ばなくなっているのを、ぼくはメジャーに行って実感しました。

 上手な選手も薬物に手を出していたことがわかりました。

 大事な野球道具も粗末に扱い、中にはグラブを座布団にしてグラウンドでチームメートと話しこんでいる選手もいました。

 それに、バッテリーの配球だって、戦術だって、日本野球の方が進んでいると思います。

 米国の開拓文化から生まれたベースボールは元来、賭博などと結びつきやすい側面があるそうです。

 飛田さんらは「ベースボール」の品格に欠ける部分を嫌って、人格を磨くことができる日本流の「野球」を生みだそうとした。

 さきほどは、「野球道」の問題点を指摘しましたが、こうした日本野球の魅力の部分は、みなさんにも積極的に受け継いで欲しいと思います。



七、その大声、無駄では?


 みなさんが大きな声を出すのは、練習中にノックの順番を待っている時と、試合で相手をヤジる時ではないでしょうか。

 ノックの順番待ちが長いのは、練習にムダが多いということを意味します。

 工夫すれば、チーム全員がインターバルトレーニングなみのテンポで守備練習ができるはずです。

 また、ヤジは日本に野球が伝来してから、100年たってもなくならない欠点の一つです。

 明治時代の一高と米国人チームとの対戦でも、ヤジのひどさを批判して「もう一高と試合をするのはやめるべきだ」と英字紙が論じたそうです。

 そんなものを続けるよりも、対戦相手や仲間にリスペクトの気持ちを表現したほうが、スポーツマンらしくてかっこいいと思いませんか。

 ぼくは「新しい野球道」の根幹にスポーツマンシップを置きたい。
 
 野球を通じて人間性を磨き、技術だけでなく精神的にも自分自身を成長させていく。

 そういった考え方を持ちながら、みなさんには野球を長く続けて欲しいと思っています。

 トレーニング理論も発展していて、うまくなる可能性には終わりがなくなっていますから。

 そのためには何より、野球が楽しくないと。

 ではみなさん、プレーボール!
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