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情熱電波!テレビ新広島 達川光男のものがちがいます ttp://wwwz.tss-tv.co.jp/tatsukawa_blog/

2011.9.27(火)最強の右バッター 落合博満 責任とプライド  今日から中日3連戦。
 
昨日も言ったけど、今週で終わりのつもりで戦って欲しい。
 
ワシは、放送席から解説しながら、じっくり見させてもらうよ。  頑張って・・・。
 
 
さて、昨日は、落合さんの話をしたんよね。
 
問題も出してましたが、皆さん、分かったかね?
 
予測不可能な荒れ球のピッチャー。  球が速くて、新人王を獲得した。

答えは、長富浩志投手 でした。
 
落合さんは、長富を苦手にしてたんよ。
 
ワシには、分かる気がする・・・。  って言うか、強打者ほど、長富タイプは苦手だと思う。
 
 
今日は、そんな所から、選手・落合博満の凄まじい思い出を話していこうかね。
 
 
まずは、長富とはどんなピッチャーだったか?
 
一言で言って、「 予測不可能の高速、荒れ球ピッチャー 」
 
ボールが速くて、球威もあったが、細かいコントロールは無いピッチャーだった。
 
勿論、新人王を獲ったくらいだから、 フォアボールを連発して、押し出しなんて事はないんよ。
 
そういう意味では、「 勝てる 」 いいピッチャーじゃった。
 
じゃが・・・、 これが、何と言うか・・・、 予測不可能な瞬間があるんよ。
 
 
配球というのは、基本、自由なんじゃが、それでもセオリーというものがある。
 
ボールが先行すれば、 やっぱり、 どこかでストライクが欲しくなる。 まぁ、当然だよね。
 
こういう時、どうやってストライクを取るか?
 
これが、バッテリーの、 特にキャッチャーの腕の見せ所になるわけよ。
 
やり方は、色々あるんじゃが・・・だよ。 
 
 
例えば、ツーボール、ノーストライクになったとする。 ボール先行の典型的なパターンよね。
 
ここは、普通、ストライクゾーンに投げてくる・・・。 
 
もしくは、最低でも、バットの届く所に投げてくる・・・。ファールを打たせてカウントを稼ぎたいから・・。
 
 
このカウントで、 顔の辺りに投げてくるピッチャーは、まず、いない。
 
そこに要求するキャッチャーも、まず、おらん。
 
 
バッターサイドからすると、 ぐっと踏み込んで、打ちにいける、まさに、絶好のチャンスなわけよ。
 
 
じゃけども、ピッチャーが長富だと、そうはいかんわけよ・・・。
 
突然、ボールがスッポ抜ける・・・。 まさかの剛速球が、顔の辺りに一直線よね。
 
 
ありゃぁ、怖いよ・・。  ホンマ、怖いと思う。
 
それも、強打者であればあるほど・・・、 やっぱり、ピッチャーも、力が入るんじゃろうねぇ・・・。
 
バッテイングチャンスでスッポ抜けるんよ。
 
さすがの落合さんも、長富の時には、踏み込めんかったなぁ。
 
 
このタイプは、嫌なものよ。 
 
今シーズンでは、カープの栗原が、ヤクルトの赤川投手を、同じ理由で苦手にしてる。
 
「 抜けるよねぇ。 わけが分からん。 セオリー関係ないもん 」 って言っていた。
 
 
落合さんは、現役時代、「 ピッチャーは信用できん 」 といつも言ってた。
 
「 ピッチャーは信頼できても、信用できん 」  いかにも、落合さんらしい言い方じゃった。
 
 
落合さんは、その物の言い方のためか・・・、 
 
時として、「 わがまま 」 「 自分勝手 」と言われる事があった。
 
監督になられてからは、「 オレ流 」なんて言われて、随分、「 我の強い人 」と思われてるみたいだ。
 
「 わがまま 」 か否か? ワシは知らん。 だって、同じチームになった事がないもん。
 
じゃが、「 自分勝手 」という件に関しては、ワシは、断固、否定する。 
 
 
落合博満は、絶対に「 自分勝手 」な男なんかじゃない。
 
落合さんほど、「 4番の責任 」を果たそうとした人はいない。
 
バットマンとしての責任感とプライドを大切にした人はいない。
 
そして、あの人ほど、プロ野球が、職業野球だと理解していた人はいないのよ。
 
 
これだけは、ハッキリ言える。
 
だって、 ワシは、「 オレ流 」の原点を、誰よりも近いところから、ずっと見続けていたんよ。
 
 
 
「 ピッチャーは信用できん 」 と言った落合さんじゃったが・・・、 
 
それでは踏み込まなかったか? というと、そうじゃないんよ。  思いっきり踏み込んだ。
 
落合さんは、自分が強打者である事が分かっていた。
 
そして、バッテリーが、強打者をどう扱うかも、十分、理解していたんよ。
 
一般的に、強打者であればあるほど、体に近い所・・・、つまり、インサイドを突かれる。
 
「 いいバッターに、内角は怖いでしょう? 」 という人もいると思うけど・・・、
 
強打者を、安全な外角だけで討ち取れたら、苦労はないのよ。
 
全ての球種、コースを使って勝負しないと、バース、落合クラスは、まず、討ち取れない。
 
もちろん、インサイドにストライクは絶対ない。
 
インサイドの・・・、体ぎりぎりのボール球。 
 
胸元で体を起こし・・・、 足元に投げて、下半身を動かす・・・。
 
思いつく限り、相手の嫌がる事をやるわけよ。 それで、ようやく討ち取れるかどうか?
 
 
厳しい攻めをされるのは、強打者の宿命・・・。  落合さんには分かっていた。 
 
そして、そう扱われる事に、誇りを持っていたんじゃないかと思われる節すらあった。
 
 
厳しく攻められれば、当然、デッドボールも多くなる。
 
じゃが、落合さんは、このきわどい球を避けるのが、また、上手いのよ。
 
体も強かった。 いわゆる「 アンコ型 」だったけど、筋肉が凄かった。
 
練習で鍛え上げられた、いい体じゃったなぁ。  努力なしでは、あんなにならないよ。
 
 
落合さんの筋肉に感心した、ワシじゃったが、それ以上に感心したのが、その態度じゃった。
 
内側を攻めれば、やっぱり、デッドボールが多くなる。 わざとじゃないけど、仕方ない。
 
バッターボックスで、落合さんによく言われたよ。
 
「 達川。 首から下なら、どんなに体に近くても、ぶつけても、文句は言わん・・・。
 
でもな・・、 首から上は止めてくれ。 オレにも生活があるからなぁ 」
 
 
実際、落合さんは、デッドボールを受けても、怒った事はなかった。
 
外国人選手が、時々、やるような、ピッチャーを恫喝するような態度も、一度も無い。
 
いつもと変わらず、しれーっと、1塁に歩いていった。
 
 
その後姿を、いつも、ワシは鳥肌の立つ思いで見送った。
 
 
 
ワシの鳥肌の理由?
 
硬式のボールに触れた人は、分かると思う。  あれは、まるで石よ。
 
それが、140キロを越すスピードで飛んでくる。
 
オーバーかも知れんけど・・・、 デッドボールとは、常に、死と向かい合わせにあるんよね。
 
 
凄まじいまでのインサイド攻め。 
 
結果、デッドボールを受けた選手が、何事も無かったように、静かに、1塁に歩いて行く・・・。
 
「 この人は、死ぬ覚悟で打席に立っている。 それが4番の宿命と腹を括っている 」
 
落合博満の後姿。  その背中に、当時のワシは、4番の責任感とプライドを見ていた。
 
 
これが、ワシの鳥肌の理由なんよ。
 
こんな選手が、断じて、「 自分勝手 」であるはずが無いじゃろう。
 
 
 
実は・・・、
 
「 徹底的なインサイド攻め 」 と「 デッドボール 」は、落合さんに強い影響を与えたと、ワシは思っている。
 
例えば、バッティングフォームがそう。
 
落合さんのバッティングフォームはオープンスタンスから踏み込んでいくスタイルじゃった。
 
オープンスタンスにしたのは、恐らく、首から上のデッドボールへの対策なんだと思う。
 
スクエアやベースにかぶるスタイルだと、首から上のデッドボールに対応できない。
 
だから、あのスタイルになったんだと思うんよ。
 
 
それから、ボールの待ち方もそうだと思う。
 
落合さんは、いつも、ストレートのタイミングで待っていた。
 
ストレートのタイミングで待って、変化球が来たら、それを打つ。
 
言葉にすると、大した事じゃないように聞こえるけど・・・、 これ、凄い事なんよ。
 
そんな凄い打ち方で、2000本以上のヒット。 500本以上のホームランを打ったんよ。
 
 
それでは、何で、こんなボールの待ち方になったのか?
 
これも、デッドボール対策だと思う。
 
だって、常に、速い球にタイミングを合わせておかないと、ボールを避けられないもん。
 
何時でも、避けられる準備をしていたんだと思うんよ。
 
 
思えば、落合さんのバットマン人生は、デッドボールとの戦いだった。
 
ある意味、それは、死と向かい合わせの野球人生だったような気がする。

強打者であるが故に、4番であったが故に、 それは宿命だったのかも知れない。
 
落合さんは、何時も、覚悟を持って戦っていた。
 
 
 
落合さんは、素晴らしいバットマンじゃったが、同時に素晴らしい職業野球人でもあった。
 
さっきも、話したけど、落合さんは、デッドボールを受けても、しれーっとしていた。
 
ピッチャーを責める素振りをする事も、ほとんど無かった。
 
 
落合さんには、分かっていたんよ。
 
自分を討ち取るためには、インサイドを使わなければ無理だという事。
 
そして、自分を討ち取る事で、ピッチャーもまた、給料を貰って、家族を養っている事。
 
「 オレもオメェも、生活がかかってるもんなぁ。 しょうがねぇよなぁ。 まぁ、インサイド来いよ 」
 
言葉には出さなかったけど、打席の落合さんの姿が、そう言っていた。
 
 
その落合さんが、ある日、ワシにボソッと、こう言った事がある。
 
その時、何の話をしてたのか、思い出せんのじゃが・・・、 突然、落合さんが言ったんよ。
 
「なぁ、達川よ。 プロ野球で1本ヒットを打った選手も、3000本くらい打った選手も、
 
それなりに凄いよなぁ。 タツ。 プロで1本ヒット打つのが、どれだけ大変か・・・。
 
オメェも分かってるだろう 」
 
2000本安打。500ホーマーの強打者が、真顔で言った言葉に、ワシは何と答えたか。
 
実は、思い出せない。  
 
ワシが覚えているのは・・・、
 
その時、ワシの目の前に、プロ野球がユニフォームを着たような男が立っていたという事。
 
その男は、とても、深い、深い、目をしていたという事。
 
この二つだけよ。
 
 
 
今日も、長くなったね。
 
落合さんの思い出は、ホント、たくさんある。
 
落合さんが、何故、あんなに勝負強いのか?
 
ワシの、少し恥ずかしい思い出も含めて、明日は、もう一日、思い出を話させてください。
 
それでは、今日はこの辺りで、また明日、ここでお会いしましょう。
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